どうも、テトです。
ライブハウスなどで偶然、自分と同じレフティのギタリストやベーシストをみかけると妙に親近感が湧いてしまいます。レフティ奏者は希少生物なので。ただ、新しくギターを始める人にレフティで始めてほしいかというと、答えはNOです。お勧めしません。
今回はそんな、ギターを新しく始めようと思っている人に対しての助言として、また右利きギタリストに対してこっそり漏らす愚痴として……w
右利きのギタリストが想像したこともないようなレフティギタリストのあんな苦労こんな苦労を、紹介していきたいと思います。
- 市場に出回っている量が少ない、割高
- 友人と弾き比べができない
- ライブステージでの所作が大変
- コード譜が逆
- マルチエフェクターのワウペダルが逆
- ギターを教えづらい
- レフティでよかったこともある
- おわりに
市場に出回っている量が少ない、割高
真っ先に思いつくのが、やっぱりこれですね。
皆さんが街なかの楽器屋さんを目にしたとき、ショーウィンドウに並べられたピカピカのギターを目にして「欲しい……!」とか「試奏してみたい!」とか思ったことが少なからずあると思います。アレ、レフティギタリストにはないです。
レフティギタリストが普通の楽器屋さんに入店して、ずらっと壁にかかったギターを眺めるときの感情、それは「うわ~いろんなギターがあるけど心が躍るようで踊らない微妙な感覚……いや『よかったら試奏してみますか?』なんて親切な言葉かけないでくれ!俺はあなたの思ってるような善良な客じゃない!いやもし百歩譲って試奏したとして絶対に購入しないしその時点でただの迷惑だから!というか試奏で左に構えた瞬間『あっ……(察し)』みたいになってその時点で視線が痛いしそうなるの想像するだけでウワァ~~~!!!」です。もしくは、メーカーや値段などには一切目もくれず、目を細め全体を俯瞰するような勢いでまるで間違い探しのように左利き用のギターを探し求めます。その行為は、まるで砂の中から金を探すような気分を味わえます。
では、レフティギタリストはどこでギターを買うのかというと、専ら御茶ノ水にある左利き用楽器専門店「谷口楽器」さんにお世話になることが多いです。関西には確か心斎橋に同じような左利き用が売ってる楽器店があるという噂……逆に言うと、レフティギタリストはそこに行かないと満足に楽器にすら相見えないということです。私は運よく関東近郊在住なので救われていますが……
そんなレフティギタリストのオアシス、谷口楽器さんで私は今持っている左利き用ギターとベース両方購入しました。
しかし、そんな左利き用楽器専門店が国内に1,2店舗しかないことからもわかる通り、そもそもの左利き用ギターの流通量がとても少ないです。製造ラインとしても、全く違うボディやパーツを用意しなくてはいけないので、当然お値段は通常の右利き用に比べて割高です。さらに、製造数が少ないということは、なかなか入荷がない場合も多くお目当ての楽器に出会える確率が低いです。しまいには、左利き用ギターをそもそも製造していないなんていうメーカーもあるので、楽器を選ぶにも選択肢がとても少ないです。この三重苦は、左でギターを始めてしまったギタリストにとって、時が経つごとにじわりじわりと重くのしかかってきます。
楽器は決して安い買い物ではないので、左利き用特有の割高というだけで福沢諭吉レベルの違いがあること・自分の100%納得できる欲しかった楽器が手に入らないことは実に大きい問題です。
友人と弾き比べができない
これは本当に悲しいです。例えばバンドメンバーが自分と違うギターを使っていた時、好奇心で弾いてみたくなっても「弾かせて!」と声をかけることができません。
「見て見て!新しいギター買ったんだよ!いいでしょ~」
「うおーいいなあ!弾いてみてぇ~」
「んじゃ弾いてみる?」
「あーでも俺左利きだから……」
「あっ……(察し)」
バンドに所属しているときや軽音楽部の部員であるとき、人と楽器を交換してみることによって「あの楽器はこういう音が出る」とか「持ちやすいギターだ」という色々なギターの違いの感覚が身についていくんだろうと思います。それができないのは結構大きなハンデ。
それに、自分が楽器を弾く=そこに自分の楽器を持っていく ということなのでエネルギー効率的にもよろしくありません。ゆえに、例えばリハーサルスタジオでのレンタル楽器も選択肢から消滅してしまっています。あれってすごいよね。200円ぐらいでFenderとかGibsonとかのちゃんとメンテされてるギターが借りられるんだもん。知らんけど。使ったことないから知らんけど。使えないから。
中学生の頃、音楽の授業でギターを弾くことになりました。課題曲は「Happy Xmas」。
Bmとかいう初心者挫折コードがあるものの、その一点を見逃せばリズムは単調で気軽に弾ける曲でもあるこの曲。
学校には当然、右利き用のギターしかなく、それが当然の如く教室の生徒皆に配られるわけです。私はそのギターを「弾きにくいなあ」と思いながらそのまま左に構えて授業を受けました。
ギターが弾ける友人から「松崎しげるかよ」と言われました。
謎の熱唱男再び!松崎しげる『黒い男2』ウタマロ石けんPR映像
右利き用のギターを左に構えて弾くということはコードを上下逆に構えるということで、邪道と表現してしまうと松崎しげるや甲斐よしひろがアレですが、普通ではありません。ダウンピッキングとアップピッキングのニュアンスも逆になることで、独特の雰囲気になります。
まあ音楽の先生からしたらたまったもんじゃなかったでしょうね。お咎めされた記憶はありませんが、もう勝手にして、という感じだったのかな。だって、先生からしたら「左手でコードおさえて、右手で弦を弾いて」と教えるところを1人全然話聞かない奴がいるんですもんね。逸脱ですよ、逸脱。
その頃から「右利き用のギターでもある程度弾けるようになろう」と日ごろから意識するようにはなりました。ポールマッカートニーの影響もあったかもしれません。
山崎まさよし - All My Loving (Beatles)
3:30あたりから。「ポールは右利き用のギターをそのまま逆に構えて演奏できる」という文言が彼のwikiにありますが、私が動画で確認したのは唯一これのみです。余談だけど、ポールを目の前にしたら誰でもこうなっちゃうよなあ…。
高校の音楽でもギターの授業があり、その時は我慢できずに自分のギターを持ってきて授業を受けました。高校は自由でいいね。
このように、自分が所持している以外のギターを弾く機会がほぼないし、あっても満足に弾けません。将来の話、たとえば居酒屋とかで、
「テトくんギター弾けるんだって? すごーい!」
店長「ギターあるよ。弾いてみて🎸」
となった時が一番怖いです。
ねーよ。
ライブステージでの所作が大変
The Beatles - I Want To Hold Your Hand - Performed Live On The Ed Sullivan Show 2/9/64
私がまだ巷のギグでのライブを経験していなかったころ…レフティで構えるというのは見た目として綺麗に映える。そのように考えていました。上のビートルズの映像でいえば、下手のポールのネックが左に、上手のジョンのネックが右にのびていて、まるで翼のように見た目的に美しいです。
しかし、現実はそう甘くはありませんでした。多くのギグは上の映像のように広くはなく、あまり自由に動き回れない狭さの中でライブをやります。その上、ネックが翼のように広がって見えるのはあくまでレフティが下手にいるときの話。私は現在のバンドではベースを担当していますが同時にコーラス担当でもあるので、下手から2番目の中央に立つことが多いです。
そうなると、何が起こるかわかりますか? 1番下手にいるギターとネックがクロスし、うっかりするとぶつかってしまうのです。その結果、ベースの私は少し前に、ギターは影の後ろに追いやってしまうことになり、ただでさえスペースが限られているステージ上で、それ以上に移動が制限されてしまうことになります。これは結構痛い。
これがもし上手に立つことになったら、ネックで邪魔するし見栄えはよくないし目も当てられません。なので私はステージに立つときはいつでもどこでも下手を希望するようにしています。過去のライブの写真なんかを漁ってみても、上手に立っているものはほぼありません。ずっと下手にいすぎて、下手が落ち着くようになってきました。
コード譜が逆
当然のことですが、コード譜は左右逆に読まなければなりません。しかし、結論から言ってしまえば、これは慣れます。
右利きとしてコード譜を読むことがどれだけ感覚的に楽かは知りませんが、少なくとも私はこの点で不便を感じたことはありません。よく言われるデメリットですが、私はそんなにかな、と思います。TAB譜なんかはそもそも何か逆なこともありませんしね。
マルチエフェクターのワウペダルが逆
ワウペダル単体で買え。
なんて言ってしまうと元も子もないので…
右利きのギタリストは普通右足をワウペダルに乗せて演奏します。上の動画の感じに。ジミマッカロクかっこいい。
対して左利きのギタリストは左足。
マルチエフェクターは当然ですが右利き用に作られているので、右足がペダルに乗せやすいような構造になっています。私は過去にこのME-25を使ってライブでポルノグラフィティの「アポロ」を演奏するときにワウを踏みました。当時の映像を見てみると、なんと右足でワウペダルを踏んでいました。器用なことしてんな。
レフティギタリストは絶対に左足でワウペダルを踏んだ方がやりやすいです。このようにマルチエフェクターを使ってワウを演奏する場合は、エフェクターの置く位置を少し考えなければなりません。
ギターを教えづらい
「正面で向き合えば鏡みたいになるから、むしろわかりやすいんじゃね?」
そう思っていた時期が私にもありました。
実際、YouTubeなどを見て自分で独学する分には、鏡だと思えばむしろわかりやすく感じました。しかし、こと人に教えるというのに関しては、めっちゃやりづらかったです。
知り合いの女の子にギターを教える機会があり、その子はもう自分のギターを持っているということだったので私が自身のギターを持って教えに行ったのですが、もう全然教えづらくて。
全くのギター初心者は、まず抑えるフレットや弦を理解するところから難しいので、指をその場所に持って行ったりとかするのですが、教えている自分でもよくわからなくなることが何度かありました。
Music写真Prostooleh - Freepik.comによるデザイン
女の子にギターを教えるにあたって一番経験したいシチュエーションが上の画像ですが、そんなことやったら自分の頭がパーになります。いろんな意味で。
初心者にギターを教えるということがこれほど難しいのかというのを身をもって経験した出来事でしたが、もし自分が右利きだったら、もう少し印象は違っていたのかもな、とも思います。
レフティでよかったこともある
レフティギタリストの苦悩の数は枚挙に暇がない…と言ったら大げさですが、これほどまでに多くあります。では、それでいてなぜ私はレフティであり続けるのでしょうか?
一番は、やはりカッコいいということが挙げられます。何をもってカッコいいとするかは人それぞれですが、少なくとも自分は左利きでギターを弾いていることにちょっとした誇りを持っています。それは、憧れのギタリスト・ベーシストと同じである、ということにも少なからず依拠しています。
'Silly Love Songs' (from 'Rockshow') - Paul McCartney And Wings
ポールマッカートニーは私の永遠の憧れであり、目標です。
過去の記事でも書いた通り、私が今もレフティを続けているのはポールマッカートニーの存在によるところが大きいです。
The Jimi Hendrix Experience - Foxey Lady (Miami Pop 1968)
ジミヘンもまた、左でギターを始めたばかりの自分を勇気づけました。親の昔使っていた右用のストラトを弦だけ左に張り替えて使っています。
Nirvana - Smells Like Teen Spirit
カートコベインは比較的最近のアーティストであることから、自分が左利きであることを述べると「ニルヴァーナ弾いてよ」と言われることが割とありました。ネットで左利き楽器の中古みててジャガーかムスタングだとだいたいカートコベイン好きだった人が手放してることが多いですね。
あと、カートは実は右利き。自分も割と右利きの部分が多いですね。包丁やスポーツは左ですが、ペンや箸は右で持ってます。細かい作業は右手が得意なので初心者の鬼門である押弦は楽でしたが、ピッキングの方が後々重要になってくる場合が大きいので、素直に利き手で始めるほうがいいという理屈はここから成り立っています。ただ、自分の場合はギターを右で構えることが本当に気持ち悪く、幼少期、記憶がないくらいの頃に買ってもらったギターの形をしたおもちゃですら左で構えていたといいます。こういうやつ。
そういう経緯があり、今も左でギターを弾いています。自分の感覚だと、右でギターを弾いている人の感覚がわからない。
K-On Fuwa Fuwa Time Clip (Husky Yui Version) - English/Romaji sub
私がギターを始めた時、ちょうどけいおんブームだったみたいで、左利き専門楽器店では軒並み"サンバーストのレフティジャズベース"が売り切れていたみたいです。当時私はまだけいおんをよく知りませんでしたが。
それから約5年後、バンドでベース担当になった私が最初に買ったベースがフジゲンの"サンバーストのレフティジャズベース"でした。なんの因果かなあ? わからないなあ。
おわりに
このようにしてレフティギタリストが今まで感じたことをあれこれ書いてきましたが、何よりも大事なのは、レフティギタリストは不便だなんだと感じながら何年も左でギターを弾き続けている人間がここにいるということで、誰よりも私自身がそのことに驚いています。
確かに左でギターを始めることによって損することは予想をはるかに超え多く、「右で始めていればこんなことには…」と思ったことも何度もあります。
しかし、同じように「左でギターやっててよかった!」と思うこともそれ以上に強い。憧れのギタリストに限りなく近づけるのは特権であり、また弾きやすい形でギターを始めることが一番だとも思うので。
それらの多くは自己満足の類でもありますが、いいじゃないですか自己満足で。趣味でやっている分において自己満足ってそうとう大事だと思うので。左でギターを始めるデメリットを挙げてはきましたが、レフティギタリストをやめなければいけない致命的な欠点がなかったことも事実で。
そうなるともう、ギターをやろうと思った時に、右で始めるか左で始めるかなんて、もうその人次第ですよね。
この記事の初めでは「右利きにしろよー」な言い草でしたが、全然そんなこともありません。むしろ、ここで紹介した苦労を背負ってもなおレフティの道を進む! と感じた少年諸君には、ぜひ左でギターを始めて、レフティギターを持ってステージ上に立つ快感を味わってほしいです。
初対面の人に対してギターを左で構えて「あっ、左利きなんだね」と言われて盛り上がった時のためにその苦悩などをネタとして整理したいがためにこの記事を書き始めました。結構そういうシチュエーションが多いので。
ぜひこの苦悩を共有して、この記事が右利きと左利きの架け橋になってくれればいいな、と思います。
おわり。
(テト)