見たこともない景色を映しながら電車は走った。自転車の上から見るはずだった景色。悔しいけれど、体は私の我儘に首を振る他ないほどボロボロだった。ふかふかのボックスシートに、暖房の効いたぽかぽかの車内。悔しいけれど、快適だった。悔しいけれど……。
私が自転車と共に走れば少しずつしか進めなかったであろう雨の中の北の大地を、いともたやすく進んでいく一両の電車。そのうち睡魔が襲ってきて、私はいつの間にか眠ってしまった……。
起床
AM5:30、起床。
いつもの毎日のように自室のベッドの上から眺める景色とは違うことに一瞬呆然としつつ、そこから自分の今置かれている状況に理解が及ぶやいなや目が覚める。途端に自分の中で幾ばくかの線が張り詰める。ワクワクや緊張が混ざったこの何とも言えない感覚。
テントの外に出ると空気がピンと張り詰め、テントには雨粒が少しかかっている。しかし幸いなことに今は雨はそれほど降っていないようだ。
お湯を沸かし、朝食の準備をする。早朝の空気を吸いながら、このお湯が沸くのを待っているのがすごく、心躍ったりする。
このカレーヌードルの一杯が何よりも美味い……。
ここ、白老ポロトの森キャンプ場はまさしく山の自然の中に作られた芝生のキャンプ場で、すごく雰囲気がよかったです。
このキャンプ場からのハイキングコースもあるようです。
テントを撤収したら……いよいよ出発の時間。6時台に出発するはずが7:50になってしまいました。今日は雨予報。今のところ雨は小雨程度ですが、まるで戦に赴くような面持ちでロードに足をかけます。
「またどこかで!」
同じキャンプ地で夜を明かしたライダーさんとこう言葉を交わし、私は白老を後にしました。
「白老ポロトの森キャンプ場」という名前の由来にもなっているポロト湖。見た目以上に大きい。
謀ったな、Google Maps!
今回の旅はひたすら道南の沿岸部を走っていくルートで、なぜかといえば当然高低差が少ないからです。
Google Mapsでルートを設定し、ひたすらその音声案内に従って走っていくのですが、いかんせん今のGoogle Mapsは自転車ルートには対応しておらず、仕方なく自動車ルートの(高速道路・有料道路を除外する)ルート検索で選択します。
そうするとどうしても山越えのルートを推奨してきやがるんですよ。距離が短いからだろうけど。そんなエンジン必要な道通らねえんですわ。こちとらエコで走ってるんスわ。
なので出発時にピキりながら「室蘭経由だよ」と言いつつルートを設定し、きちんと沿岸部を通るルートになっていることを確認してから今日出発したのです。
しかし、Google Mapsの道案内を聞きながら走っていると、何やら上り坂が多い道だなぁ、沿岸部を走るつもりなのになんだか森が多いなぁと思いながら開始3kmを走っていました。
「これはおかしい!」とようやく思い、自転車を止め死ぬほど重いバックパックを下ろしスマホを見てみると、なぜか知らぬ間に山間部を通るルートに変更されていた!!!
天下のGoogle Maps様、なんの相談もなしにルート変更。まさに「Google Maps! 謀ったな、Google Maps!!!」状態。
それでも3kmほど走るまで気づかなかったのはさすが方向音痴と言われるだけはあるでしょう(さすがじゃねえよ)。
Google Mapsに裏切られつつ、気を取り直して白老の市街地まで戻り走り続けます。
死ぬほど辛い
やはりというべきか、予報通り雨が降ってきた。時折くる上り坂が死ぬほど辛い。昨日から肩に10kgを乗せて走り続けてきた疲労は昨夜一晩ではまったく回復し切れていないと悟る程度には、昨日のような勢いが全くない。
右手には線路と山、左手には海。天気がよければ絶好のロケーションだが、あいにく天気は死んでいる……。
今晩泊まる予定の長万部まで、距離にして125km。最終チェックインが17時だから……と考えると、少なくとも時速15kmで走らなくてはいけない。サイコンとにらめっこして、時速17~18kmを出しては辛くなって2~3kmごとに荷物を降ろして休んで……というのを繰り返していた。疲労、というよりも、肩とお尻がめちゃくちゃ痛かった。肩に大荷物を背負いながら雨の中鈍足で走行して……というのはあまりにも堪えた。
出発して17㎞を過ぎ、竹浦駅を通り過ぎようとするころ、再び耐え切れず休憩。今自分がいる位置とこれから走らなければいけない距離を確認する。間に合うかどうか、ギリギリのラインで走っていた。このまま何も起きず減速もせず走っていられれば間に合うかもしれないが、何か起きれば即アウト。そうでなくても雨や荷物に体力を奪われて遅れが出ていくだろう……もう目的地にたどり着く自信はどこにもなかった。
「……諦めよう」
そう決心したとき、見覚えのあるバイクが一瞬通り過ぎた後、すぐ前方で路肩に停まった。
再会
バイクから降り、こちらに向かってきた人は昨晩同じキャンプ場でテント泊したライダーさんでした。
「休憩中?」
聞かれて、はいと答える。もう何度も辛くなってこのように自転車を止めているので、休憩という穏やかなニュアンスではないんだけれども……
「お兄さんもこっちの方向だったんですか?」
と聞くと、どうやらこれから登別のクマ牧場に行く予定らしい。逆に、「長万部まで順調?」と聞かれ……
「いや~実は全くダメで……登別まで行って電車で輪行しようかなって思ってます」
とうとうそう答えてしまった。もう、心はほぼくじけかけてしまっていました。それでも「頑張って」と声をかけていただき、バイクに戻って行って、見えなくなりました。
できればひっそりとリタイアしたかった。それでも、ブログには書くけどね。ライダーさんにもリタイア宣言してしまったけど、あと10㎞弱だと思うととたんに元気が出てきた。完走はできないけど、その分登別で何か観光でもしよう!
再会Part.2
再び自転車を漕ぎ始める。まだ辛いけど先の見えない焦りはなくなっていた。そして登別に行く前の最後の休憩としてちょうどいいところにセイコーマートがあったので、そこに寄ることに。するとまたもや見覚えのあるバイクが。
「丁度いいところにセイコマがありましたね~」みたいなたわいもない会話を交わしつつ、各々の栄養補給を終え、再び会釈をして別れる。今朝のタイミングでも、また道端でバイクを停めて心配してくれたときも「これが一期一会、もう会えることはないだろうな」という感覚はあったけれども、3度目にして、このセイコーマートの前ではそれが正真正銘「これが本当の最後」というような感覚がありました。ここまで何回も会うと、少々の名残惜しさというのが出てくるけれども、それでもお互いの名前も知らず、「またどこかで。」と別れる。これぞソロ旅の一期一会なのかもな、とぼんやり思いました。
登別にて
AM10:00、登別へ到着。14時の電車までまだ時間があるので、登別で観光をする暇がありました。しかし、当初の予定では登別は通過点だったので何も調べていない。検索をしてみると、ライダーさんが行ったクマ牧場、地獄谷、伊達時代村など、興味を惹かれるものがいくつかありました。しかし、立地的にはどれも市街地を離れた山の上。自転車で行くのは辛いし、時間的にも微妙……ということで、登別が見えてきたときに真っ先に目に入った観覧車のある「登別マリンパークニクス」に行ってみることにしました!
言ってしまうのは少し憚られますがその観覧車がいかにも時代を感じられて、しかも動いていなかったので、どよーんとした天気も相まって最初は「廃墟かな?」と思い、廃墟フェチの私はちょっと気になっていたんですよね。無論、廃墟であれば中には入れないのですが。
後で調べて分かったことですが、観覧車は登別マリンパークニクス(水族館)の中にある遊園地にあり、その遊園地は原則土日しか営業されてないみたいですね。しかも10月下旬~4月上旬まではそもそも営業していないという。私が行ったのは10月上旬の平日なので、観覧車は動いてなかったんですね。
というわけで、遊園地は動いていないもののスマホで調べるとどうやら水族館で営業しているらしいし、入口から車がいくつか入っていくので、私も訪れてみようということに。ただ駐輪場がどこかわからなかったので、駐車場の料金を取っている方に聞いてみることに。
「すいません、自転車はどこに置けばいいですか?」
「あーじゃあ自転車は、あそこの建物の横にでもつけといていいよ~」
とトイレがあるレンガの建物の横を指さした。自転車で来る客はよっぽど珍しいのか、駐輪場という概念ではなく、この日も私1人のようでした。
「お金は払わなくていいですか?」
「大丈夫。お兄さんどこから来たの?」
はち切れるようなバックパックを背負ってロードバイクに乗る私はどう見てもロングライダーなのだろう。
「埼玉から来ました。新千歳空港から函館まで旅してます」
「は~すごいねぇ。楽しんでね!」
旅のロングライダーにかけられる言葉としてはテンプレみたいなものだけど、こういう言葉がやけに嬉しかったです。
自転車を置き、水族館入口に向かいます。
マリンパークニクス
受付でチケットを買い中に入ると大広場に出ました。これは帰りに撮った写真なので人がいるのですが、入った時は本当に人が2~3人しかいなくて「寂れてる……」と思ってしまいました。
いくらレインウェアを着ているとはいえ雨の中傘なしで屋外にいるのは辛いので、とりあえず駆け込んだ先はイワシの水槽。
イワシが超大群で綺麗でした。
ちょっとした席が用意されているのにマジで人っ子一人いなくて、確かに平日だけども大丈夫か……と思っていると、何やら隣の施設から笛の音が聞こえてきました。
そちらの方向へ階段を上がると、ショープールにてアシカショーをやっていました! しかも満員、ざっと2、300人くらいでしょうか。広場に人がいなかったのはこのためだったんですね。勘違いしてすみませんでした。
平日ですが30分刻みにこういったショーなんかをそこかしこでやっていて、それに合わせてお客さんが移動するみたいな感じでした。
アシカショーが終わったのでペンギンコーナーへ行ってペンギンを見ていると、なんとペンギンのショーが始まるみたい。雨の中広場で待つこと十数分。
おっ?
何やらとことこ……
歩いてくるぞ?
ペンギンさんが目の前を歩いてくれるコーナー。めちゃくちゃかわいい!
手を伸ばせは届きそうなくらいすぐ目の前を歩くペンギンさん。こんな間近で見たことないしとことこ歩く姿が超可愛いので、このショー、めちゃくちゃ推せる!
超可愛い。ほまーに。
ペンギンさんを見た後は、水族館の施設をぐるっと全部見て回ることにしました。大ボリュームのニクス城、爬虫類や両生類が展示されている陸族館といろいろ楽しめます。
ニクス城では最初にエスカレーターで最上階に行くのですが、エスカレーターの真下がサメのいる巨大水槽なのでめちゃくちゃ怖かった。何かの拍子に落ちちゃったらどうしようと。
ノコギリエイが個人的にカッコよかった。
陸族館ではカエルとかトカゲとかタランチュラとか様々なものが展示されてました。タランチュラは見てませんが(8本以上足がある生き物は生理的に無理なので)。
カメが交尾しているところを偶然目撃して「珍しい」と動画を撮影してみたものの、よく考えたらカメの交尾動画を撮ってどうするんだと冷静になって思いました。というかそもそも1人で水族館って……w 寂しすぎる。妹にも「1人で水族館…ww」と笑われるし。悲しい。
どうやら中国人観光客がバスで団体で訪れているようで、お客さんの半分以上が中国人なんじゃないかと思うほど中国語しか聞こえてきませんでした。そんな中で聞こえてきたある日本人の会話が、恐らく若い女性とそのお母さんとの会話で「この前来たときはこんな展示なかったよね」というような常連さんにも思える話。どことなく地元感のある会話で、雨の平日の昼間にのんびりと訪れているのどかさがよく感じられてすごく落ち着きました。
すべての展示を回り終えたところで12時になりお昼の丁度いい時間となっていたので、水族館を出て地元の有名なご飯屋さんでも食べに行こうかとも思いましたが、検索して出てくるのは海鮮のお店ばかりなので(私は生魚や甲殻類など軒並み食べられない)、水族館の中にあるレストランでのんびり食べるのもいいかなと思い、レストラン「リーベ」で食事することに。
頼んだのは「タラとチーズの焼きカレー」。タラが美味しくてボリューミーで、何よりも雨で冷え切った体にカレーがすごくあたたまりました。
お客さんも少なく静かでのんびりと過ごしていると、13時近くなり電車に乗り遅れそうだったので、お土産を少し買って急いで登別駅へ。
室蘭線
輪行にまだ慣れておらず、余裕を持ったつもりの30分がギリギリになってしまいました。改札に向かうとスイカが使えず、焦りに焦って血眼になりながら長万部駅を路線図から探し出し券売機で切符を買い、改札を抜けてホームに駆け込むと電車は橋を渡った向こう側のホームに来ていて、急いで橋の階段を昇り降りて一両編成の電車に駆け込みました。死ぬかと思った。
この電車を逃すと2時間後とかいう世界線。当然キャンプ場のチェックインには間に合わない。こわ……。
それでもなんとか乗れて、ボックスシートに腰を下ろした。すぐに電車は出発した。
見たこともない景色を映しながら電車は走った。自転車の上から見るはずだった景色。悔しいけれど、体は私の我儘に首を振る他ないほどボロボロだった。ふかふかのボックスシートに、暖房の効いたぽかぽかの車内。悔しいけれど、快適だった。悔しいけれど……。
私が自転車と共に走れば少しずつしか進めなかったであろう雨の中の北の大地を、いともたやすく進んでいく一両の電車。そのうち睡魔が襲ってきて、私はいつの間にか眠ってしまった……。
気が付くと終点の長万部駅に着いていました。16時なのでさほど暇はなく即行で輪行からロードをほどきます。先ほどまで降っていた雨はロードに乗るときにはやんでいました。ここから3kmも走れば今回のキャンプ地に到着。
長万部公園
こうして16時半にはキャンプ地である長万部公園へ到着。受付の館内に入ると大きいヒーターがすぐ近くに設置されていて、すごく暖かかった。
「いらっしゃい。寒いでしょう、ヒーターの近くで温まってね」
自転車に乗るとすぐに体が温まり、インナーの保温効果もあって半袖半ズボンに上下インナーという見た目ほど冷えてはいなかった。しかし、寒いという感覚を幾分か消し去っているランナーズハイのような存在もある気がした。ふやけるようなヒーターの温風と受付の奥さんの優しさが温かかった。
「関東のほうだと今でも日中20度はいくだろうから、こっちの寒さにびっくりしたでしょう」
「えぇ、まぁ。でも空気は澄んでいておいしいし自転車漕いでるとこれくらいが丁度いいですよ」
そんな会話をしつつ申請をし説明を受けて、テントを張りに館を出ました。
長万部公園もこれまた綺麗な整備されている広い公園で、遊具の近くでさえなければ基本どこでもテントを張ってOKという素晴らしいキャンプ場でした。依然雨の匂いは抜けないので、東屋に自転車を置いてその近くにテントを張ることに。
よし、この辺にするか(CV:東山奈央)
ペグは周りにある大きな石で打つのが軽量キャンプの鉄則。
ポールの端をテント本体の四隅にある穴に固定し……(CV:大塚明夫)
今夜は風も強く吹きそうなのでガイラインにもペグを打ちます。
よし。(CV:東山奈央)
テントを張れた。ちなみに張っている最中にフランス語圏らしき外国人カップルがマウンテンバイクを押しながら「コンニチワ」って挨拶してきました。その後ドローン飛ばして遊んでました。ドローンいいなぁ。
張り終えたところで丁度17時を回ったので、休憩もそこそこに買い物がてら温泉に行くことにしました。
長万部温泉
赴いたのは丸金旅館。(なぜ写真を撮っていない)
500円で日帰り入浴ができ、タオルも有料とは書いてあったものの私の場合は入浴タオルは無料で利用することができすごく良心的でした。
温泉まで向かう廊下で炊事場から子どもの声が聞こえてきたりしてめちゃくちゃアットホームな旅館感が出てすごく心動かされました。
温泉は本当に熱くて私好みのものでした。本当に気持ちよくて長風呂していたいのですが明日朝早く出発したいので惜しみながらも十分温まったところで出ます。丸金旅館オススメです。
ソロキャンクッキング2日目
熱い温泉で十分に温まったとはいえ外は真っ暗で超寒いので湯冷めを避けるべく急いで戻ります。
途中でセイコマでお料理の準備。今日は昨日よりも料理したい……!
……の前に。今回の北海道旅初ガラナ。
まずはカップラーメン食うか~(料理はどこへ)
北海道名物ザンギ。ちなみに唐揚げとの違いは知らない。
野菜も食べなきゃと思ってニラもやしにんじんのミックス野菜を買いました。普段コンビニで野菜とか買わないけどこれ結構野菜入ってて安いし一人暮らしとかしたらこれ絶対お世話になりそう。セイコマだけなのかなぁ。
コッヘルの中に入れて水を入れて茹でます。
これ撮った時の自分の心情、間違えて曇っちゃったのか狙って曇らせたのか覚えてませんがなんかすごくあったかみを感じてセンスある。自分で言うのもなんだけど。
ソロキャンしてる時のクッカーからの湯気、幸せすぎる。
そのまま食べても味がしないけどなぜか美味しいし、麺を食べた後のスープに入れて食べても美味しい。煮卵とかも入れた。美味しい。
昨日の料理よりレベルアップしてるか知らんけど、美味しいからいいや。
今回の旅の写真で一番「ロングライドソロキャン」を一目で表しているのこれかもしれない。自転車とテントが両方映ってる写真これしかねぇ。
寝袋の中で
北海道旅行2日目。今日もなんだかんだで色々あったなぁ。
昨晩泊まったキャンプ場で会った一人のライダーさん。通りがかったらバイクを止めてまで心配しに来てくれたりして、すごく嬉しかったな。
もう会うことはないと思うとなぜだかすごく寂しくなる。都会の喧騒から離れたくて一人旅してるとかそういうわけじゃないけど、でもどちらかといえば一人の方が好きだし、親しくない人たちと群れるのは苦手だ。だから、別に会ったら会ったで何をするというわけでもないけど、でももう会えないんだと思うと、悲しいというわけでもないけどどこか心がキュッとなる。
でも、だからといって連絡先を交換したりするのは、なんだか違うと思う。強く思ったのは、今回の旅はSNSとか現代のインターネット文明とは対極に位置するもののように感じたのだ。確かにスマホで道案内を調べて未知の北海道を走り、Bluetoothを使って音楽を聴いたり、インスタのストーリーに「今日はこんなとこ行きました」と動画をアップロードしたりしてはいるが、SNSで他人の動向を見るとすごく疎外感を感じるし、それは1日目と同じでした。「バチェラー面白かった~」とか今アマプラ見れる環境下にないし、てかこの寝袋から出たら寒くて死ねるし、疲れたし生きるのに精一杯だし……
だから、今回の旅で出会って、私と同じようにソロキャンしている人は目に映る実体だけがその人だし、インターネット上の顔とか時間の流れとか全く紐づけたくないんですよね。だってロードで一人でキャンプしてるやつが「志摩リンに憧れて来ました」とか「映画イエスタデイはクソ!」とかネット上で言ってたら幻滅に似たような感情を抱くと思うんですよね。そう思うと現代ってリアルの友達はほぼネット上でも繋がってるっていう環境もよく考えるとアレに思えてくるし、インスタの友達多い人とかも羨ましいけど考え物だなって思う。
結局何が言いたいかというとうまくまとめられないんですけど、ソロキャンは現代社会を生きる我々にとっての中和剤なんじゃないかと思うんですよね。こう言うとソロキャンがなんか仰々しいものに思えてくるけどソロキャンに限ったことではなくて。
現代社会を生きる疲れって、肉体的なものよりも精神的なもので感じる人が多いんじゃないかと思います。ことネット社会においては特に。肉体的には元気だけど心が疲れ切ってしまう普段の生活と、移動にエンジンも使わず不便で肉体的にすごく疲れるけど空気は美味しくてなぜか人との出会いは温かくて心は癒される。いや体を動かすストレス解消法ってだいたいそうでしょって言われるかもしれないけど、私にとってのそれがソロキャンなんだなって気づいた瞬間。肉体と精神のこんな二極的な見方ではソロキャンの魅力を十分に表せないかもしれないけど。
あと、スマホ社会を完全に切り離した旅も今度やってみたいですね。
そして、新千歳から函館までロードで完走するという目標を、今日リタイアした。正直、100km級の距離を舐めていたというのもあるかもしれないけど、それ以上に雨が自分にとってすごく障壁で、そんな雨にいとも簡単に崩されてしまった自分の無力さに唇を噛んだ。
雨が降った。荷物を肩に背負って行った。いくらでも言い訳はできるけど、そんな障壁に堪えられなかった自分の弱さというところに全て返ってくる。そして2日目の夜はいやに弱気だった。
2日目は感じたことをスマホにメモをしていたんだけど、そこに「自分の無力さ ロードバイクは無理」ってストレートに書いてあって笑いました。続けて「家に帰りたい? 落ち着きたい?」って書いてありました。"?"がついているあたり、完全に家に帰りたくて仕方ないわけじゃなさそうでしたが。それぐらい心が折れかかってたのかもしれない。
あと、時代が進歩してもロードバイクでロングライド旅をするかについても考えていました。何年先になるかわからないけど私は車が自動運転になる未来は必ず訪れると思っていて、それに合わせて自動運転に適した道や町が整備されていくだろう。どこへ行くにしても誰でも簡単に行けるという世界が訪れてもなお、私は今みたいに疲弊しながら、周りから「よーやるわ」と言われながら、自転車で旅をするだろうかということを考えました。これは、旅が終わった後だから言えますが「やりたい」ですね。確実に。
2日目・振り返り
ロードで走った距離は30kmほど。こうしてみると電車の偉大さも感じます……。
明日も110kmという気の遠くなるような数字が待っています。明日は、走れるのでしょうか……。
続く。
北海道ロングライドソロキャンシリーズはこちら